フルカラーとクリアの一体3Dプリント模型の製作

先日Twitterでたくさんの反応を頂きましたフルカラーとクリアの一体3D造形についての着想(仕様設定)から製作(モデリング)までをまとめました。

イベントの公式blogでは他の作品も紹介されています。あわせてどうぞ。

着想

鉄道模型で透明部品が必要な箇所は主に窓の部分です。

出品中の姫路のモノレール (1/150)

そこでフルカラーとクリアが同時に使えると聞いてまず思い付いたのは車体と窓を一体で造形することです。現在製品として出している姫路のモノレールは窓部分を黒塗りとしているので、これをクリアで置き換えれば良さそうです。

3Dデータ

幸い3Dデータはフルカラー以外でも3Dプリントできるように窓部分は分割していましたのでデータ作成も簡単に済むと思っていました。
しかしながらレギュレーションを確認すると造形サイズは75*75*75(単位mm)以下とあります。
なんとこれでは今持っている1/150の車体は長さが100mmありどうやっても入りません。

取れる手法は以下の2つでした。

・スケールはそのまま車体を収まるサイズに切断する。

・スケールを小さくして規定サイズに収める。

造形物は自分の手元で飾ることになると思うと中途半端な位置で切断されているものは欲しいとは思えず、スケールを小さくしZスケール(1/220)とする方向で考えますがここでまた問題がありました。

車体を全部造形しなくても良いようなジオラマ風も考えていましたが没に…

最小造形サイズの制約というもので、この3Dプリント方式では最低1mmの肉厚が必要です。

スケールを小さくすると当然車体の厚みも薄くなりますが、最低1mmの肉厚を守るとスケールに対して車体が分厚く不格好になってしまいます。最低肉厚を見栄えに考慮すると従来はNスケール(1/150)が限界と考えていました。

ただこれはクリアインクによって解消する事が可能でした。つまりフルカラー+クリアで肉厚1mm以上になっていれば良いので、車体として見えるフルカラーの部分はスケール通りの薄さにすることができます。

さらにこの手法は座席などこのスケールでは最小造形サイズ以下になってしまう部分を再現する事にも使えます。

このクリアによってフルカラー部分を支えるという考え方は、ある意味造形サイズの制約による賜物でした。

モデリング

上記の着想に沿ってモデリングを進めていきます。
このコンテストに気づくのが早ければ新しい車種を起こしたかった所ですが、実質1週間しかなかったため既存のデータを活用することにしました。

Nゲージサイズ(奥)とZゲージサイズ(手前)

まず既存のNゲージサイズ(1/150)の3Dデータを1/220に縮小します。これはFusion360であれば尺度コマンド一つで出来るので一瞬です。フルカラー部分を支える事になるクリア部分は空洞部分を埋め尽くすような形状になるのでまずは車体と内装をモデリングしました。

クリア部分作成の初手

車体と内装が出来たらクリア部分のモデリングです。車体を完全に覆うようなブロックを作成し、このブロックを結合コマンドにより車体と内装の部分をくり抜きます。くり抜いた後に車体の外側の部分は不要なので削除し、窓部分を結合することでクリア部分の3Dデータができました。

フルカラー部分とクリア部分
完成した3Dデータ (水色がクリア部分)

最後に車体と内装のフルカラー部分とクリア部分をそれぞれ書き出して完了です。
車体と内装の色付けは普段はBlenderと3DBuilderで行っていますが、今回は時短のためFusion360から3mf形式で書き出す事でフルカラー3Dデータを作成しました。

造形完了
造形されたモデル

造形品は写真のように狙い通りフルカラー部分が崩れることなく造形されています。

内装再現

内装も綺麗に再現されており、従来のフルカラー3Dプリントの限界を超えた出力ができました。

後付けの幌を取り付け

顔は片方には別に造形した幌を取り付けてあり、従来のフルカラー3Dプリント同様に部品の後付けも可能なようです。

最後に

フルカラーとクリアが一体で3Dプリントできるということで、Zスケール(1/220)のモノレールを車体から内装まで可能な限り再現した模型ができました。
クリアを使うことで従来のフルカラー3Dプリントの制約であった最小造形サイズの課題を解決できる事が実証でき、
Zスケールで可能であることから大きいスケールでも同じ手法の適用可能性が高そうです。

今回このような機会を頂きましたDMM.make様とミマキエンジニアリング様に感謝申し上げます。

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