博物館に展示されているレベルの大きさの1/35 E235系を作ってみました。
目次
はじめに
博物館に展示されている鉄道車両の模型は、市販の鉄道模型と比べて大きなスケールで製作されています。これらの模型は基本的に一点物の特注品で、市販されているものではありません。そのため、価格以前の問題として、入手自体が極めて困難です。
個人でこのような大スケールの鉄道模型を特注するのは至難の業ですが、本記事では個人で内製した手法について紹介します。なお、鉄道模型はNゲージのように「走行性能」と「精巧な外観」の両立が魅力の一つですが、本記事では展示に特化したモデルの製作を目指しました。
仕様設定
製作に入る前に、まずは仕様を設定しました。個人製作では使える機材や素材の限界があるため、費用や素材、時間などの制約条件の中で希望する模型を実現できるか検討する必要があります。
以下に今回の製作で設定した仕様をまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
縮尺 | 1/35 |
製造方法 | 3Dプリントサービス、レーザーカッター |
素材 | レジン、MDF(厚さ2.5mm) |
車両 | E235系1000番台先頭車 |
仕様設定の理由
- 縮尺:鉄道博物館の模型は1/45以上の縮尺が主流ですが、今回は1/35を採用しました。これはタミヤのミリタリーシリーズと同スケールで、他ジャンルの模型と並べることができます。ちなみにこの縮尺は市販のHOゲージ(1/80)と比べて2倍以上の大きさにになります。20m級の車両では、全長が50cmを超えます。3Dプリントサービスを利用して1/24スケールを出力をした事もありますので、1/35であれば十分可能と判断しました。
- 製造方法:3Dプリンタとレーザーカッターを使用します。家庭用の3Dプリンタでは50cm以上の出力が難しく精巧な仕上げが必要なため、3Dプリントサービスを利用することにしました。レーザーカットするためのMDFはホームセンターで安価に入手でき、平面パーツの製作に適しています。
- 車両選定:横須賀線のE235系を選びました。最新の車両で個人的に馴染みのある形式にしました。
設計(3Dモデリング)
上図は今回モデリングしたE235系1000番台の3Dモデルです。
3DモデリングにはAutodeskのFusionを使用しました。モデリングの手順を詳細に解説するとそれだけで一つの記事になってしまいますので、モデリングの全容は下の動画をご覧ください。
モデリングの順序は以下の通りです。
- 断面図を描く
- 顔、側面、屋根を順に概形→細部の順でモデリング
- 足回り(床下、台車、スカート)をモデリング
モチベーションを保つため、今回は最初に車両の顔を作成しました。モデリングが完了したら、製造しやすいように部品を分割します。車体、クーラー、床板、床下機器、スカート、台車に分割しました。
製造
部品の分割が終わったら製造に入ります。
- 3Dプリント部品:3DCADからstl形式で書き出し、サービスにデータをアップロードして出力
- レーザーカット部品:3DCADからdxf形式で書き出し、施設で機材をレンタル
※施設を利用する際は事前に講習を受ける必要がある場合があります。
部品が揃うと、実際の模型の大きさを実感できます。
完成
最後に部品を組み立てて完成させます。なお隙間を確保しないと部品がはまらないため、あらかじめ0.5〜1mm程度の余裕を設けました。
完成した模型は机を埋め尽くすほどの存在感があり、このスケールならではの迫力を堪能できます。